経済産業省『平成21年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)』2010年、は、 各電源の発電コストを、キロワット時あたり、次のように表しているそうです。

太陽光 49

風力(大規模) 1014

水力(小規模除く) 8〜13

火力(LNGの場合) 7〜8円

原子力 5〜6円

地熱 8〜22

これに対して、大島堅一さんは、独自の試算により次のように見積もっています(大島堅一『原発のコスト−エネルギー転換への視点』、岩波新書、2011年、p.112)。

原子力 10.25円/キロワット時

火力 9.91円/キロワット時

水力 7.91円/キロワット時

なぜこの違いが出るでしょうか。

@ 政府の試算では原子力の運転年数を40年、設備利用率を80%としています。実際には、2012年に40年を迎えた美浜原発2号機は現在運転の見込が立っていませんし、 日本に原発ができて以来の実績を全国平均でみると、設備利用率は70%程度です。ちなみに、火力発電の設備利用率は50%程度ですが、原発が停まれば火力発電の設備利用率は80%程度まで上がり、発電単価はその分下がります。加えて、原子力発電には電力会社は広告料や寄付などの「普及開発関係費」を多額にかけています。東京電力の2010年度の広告費は116億円です。この費用なくして原子力発電は成り立たないのですから、これもまた原子力発電の費用に加えなければなりません。これらの費用を加えて、大島さんは、発電事業に直接要するコストを、次のように試算しています。1970年度〜2010年度の平均で、1キロワット時あたりです。

原子力 8.53

火力 9.87

水力 7.09

A 政府の試算には、技術開発コストと立地対策コストが含まれていません。立地対策コストとは、電源三法にもとづく交付金で、いわば迷惑料支払いです。このコスト抜きに原子力発電が不可能だということは、異論のないところだと思います。 これらは電力会社が負担していないので、電力料金には含まれませんが、政府が支出しているので税金に含まれています。私や多くの労働者にとっては、電力料金で負担しようが税金で負担しようが、同じことですよね。大島さんの試算では、1970年〜2010年のこれらコストは、キロワット時あたり、

原子力 技術開発コスト1.46円+立地対策コスト0.26

火力 技術開発コスト0.01円+立地対策コスト0.03

水力 技術開発コスト0.08円+立地対策コスト0.02

B なお、大島さんの試算にも、いわゆるバックエンドコストは含まれていません。政府の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会の2004年1月23日の報告によれば、バックエンド事業の費用の合計は188000億円です(p.118)。バックエンド事業の範囲は、2006年度〜2046年度で、使用済み燃料3.2万トンとしています。内訳は、再処理が11兆円です。あと、高レベル放射性廃棄物処分が2兆5500億円などです。これは、政府の委員が計算しているのではなく、電力会社がそう言っている、と言っているだけです。これらの費用はキロワット時あたり5〜6円には、当然、含まれていません。大島さんがこの費用を試算に加えないのは、本当にこれだけの額で済むのか、その数倍かかるのではないか、まったく見当がつかないからです。

 

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